大阪・関西万博「クラゲ館」で実現した参加型体験とは? 3D表現×投稿システム開発の裏側
大阪・関西万博パビリオン「クラゲ館」では、「参加型・共創型の体験」を3D表現を活用したユーザー参加型コンテンツで提供しました。その結果、多くのユーザーが参加し、会場内でもサイネージ前で人が立ち止まるなど高い注目を集めました。
ユーザー参加型のコンテンツは、イベントやプロモーションを行う上でユーザーが「自分が関わっている」という実感を持てるため、全体の盛り上がりと参加意欲の向上につながります。また、3D表現を活用することで、よりリアルで没入感のある体験を提供できます。
今回のシステム開発では、3D表現を活用したユーザー参加型コンテンツの開発を株式会社BALANCeが支援いたしました。
本案件を担当した株式会社BALANCe 代表取締役 藤井宗一郎に取り組みの内容や開発のポイント、複雑な案件を成功させる体制づくりについてインタビューしました。
多くのユーザーが参加した大阪・関西万博「クラゲ館」のシステムとは
クラゲ館でのシステム開発事例について教えてください
大阪・関西万博パビリオン「クラゲ館」のプロモーション施策として、来場者がその場でコンテンツを投稿・参加できるユーザー投稿型インタラクティブシステムを開発しました。単に情報を表示するのではなく、来場者が「自分もこの展示に参加している」と感じられる体験を目指しました。
フロントエンドには3D表現を活用したモーショングラフィックスを実装し、視覚的な没入感と機能性を両立させています。
万博という大規模かつ高い信頼性が求められるイベントにおいて、デザインの表現力から堅牢なバックエンド・インフラ構築までを一社でまとめて提供しました。その結果、来場者のエンゲージメントを高めるインタラクティブな体験の安定稼働を実現しています。
クラゲ館のユーザー体験を実現した2つのシステム
クラゲ館で活用されたシステムの特徴はなんですか?
今回のシステムの特徴は、ユーザー投稿型システムと3D表現を活用したモーショングラフィックスです。これらを組み合わせてシステムを構築することにより、リッチな体験をユーザーに提供できるようになります。
記憶に残るユーザー投稿型システム
まず、ユーザー投稿型システムを活用し、来場者自身がその場でコンテンツを投稿・参加できる仕組みを実装しました。
一方向に情報を届けるだけでなく、来場者を「コンテンツの作り手」として体験に巻き込むことで、パビリオンとしての記憶に残る体験価値を生み出しています。
エンタメとして成立させられる3D表現を活用したモーショングラフィックス
投稿されたコンテンツをリアルタイムで3D空間に反映し、動きのあるビジュアルとして展示しました。
単なる情報表示にとどまらず、見た目そのものをエンターテインメントとして成立させる表現を実装しました。
また、パビリオンで使用されている建物や装飾を画面上でリアルに表現しています。
ユーザー投稿型システムを活用するメリットはなんですか?

ユーザー投稿型システムのメリットは、来場者・ユーザー自身がコンテンツづくりに参加できることです。特に、以下のようなメリットがあります。
エンゲージメントの向上につながる
一方向の情報発信と異なり、ユーザーが能動的に参加することで体験への没入感が高まります。
ユーザーによってコンテンツが生成される
運営側がコンテンツを都度用意する必要がなく、ユーザーの投稿によってコンテンツが積み重なっていく仕組みです。
拡散・口コミ効果がある
「自分が投稿した」という体験はSNSシェアや口コミにつながりやすく、集客・認知拡大にも効果があります。
リアルタイムでの盛り上がりを表現できる
イベントや展示など「その場の盛り上がり」を可視化するコンテンツとして特に効果があります。
3D表現を活用するメリットはなんですか?
3D表現・モーショングラフィックスのメリットは、「見た目の質がそのまま体験の質になる」場面で特に力を発揮することです。特に、以下のようなメリットがあります。
情報が直感的に伝わる
平面では伝わりにくい奥行き・空間・動きのある情報を、直感的かつ魅力的に表現できます。
ブランドの信頼感が向上する
ビジュアルクオリティの高さは、プロダクト・サービスへの信頼感に直結します。
インタラクションとの親和性が高い
ユーザーの操作・投稿に対してリアルタイムで3Dアニメーションが反応することで、インタラクティブな体験としての完成度が高まります。
他のWebサイトとの差別化
一般的なWebサイトや平面的なデジタルサイネージとの明確な差を生み出せます。
3D表現とユーザー投稿型システムを活用して制作する中で気をつけるべき点はありますか?
今回のように3D表現とユーザー投稿型システムを活用して制作する際、注意すべき点はいくつかあります。
ユーザー投稿型システムの注意点
ユーザー投稿型システムの場合、以下のような点に注意しながら制作しています。
投稿内容のモデレーション設計が必要
不適切なコンテンツが公開されないよう、フィルタリングや承認フローを事前に設計する必要があります。
負荷集中への対応が必要
イベント開始直後や人気コンテンツが出た際に投稿が集中することを想定した負荷設計を行う必要があります。
誰でも使えるようなUIのシンプルさ
来場者は年齢もITリテラシーもさまざまなため、直感的に使えるインターフェース設計をする必要があります。
3D表現・モーショングラフィックスの注意点
3D表現・モーショングラフィックスの場合、以下のような点に注意しながら制作しています。
端末・環境に対応できるかを確認する
端末によって3D表現を使えるかどうかや処理性能が違うため、利用する環境を限定するか、うまく表示できない場合の代替表示を用意する必要があります。
パフォーマンスと品質のバランスを考慮する
高品質な3D表現はそのままでは重くなりやすいため、アセットを最適化し、描画処理を軽量化する必要があります。
ユーザー投稿との連携を設計する
投稿データを受け取って3D空間に反映するまでのデータフローを、フロントエンドとバックエンド双方が連携して設計する必要があります。
大規模なシステムの安定運用を実現するために重要な体制
今回のシステムを開発するためにはどのようなスキルが必要ですか?
今回のシステムでは、見た目の演出だけでなく、投稿機能や安定稼働まで含めて設計する必要がありました。そのため、フロントエンド、バックエンド、インフラの3領域を横断する専門性が求められました。
また、万博で活用できるようなユーザー投稿型システムと3Dモーショングラフィックスを組み合わせたシステムを開発するには、以下のような複数の専門領域を横断するスキルセットが求められます。
フロントエンド(表現・インタラクション)
- Three.js / WebGL などを用いた3Dレンダリング・アニメーション実装
- リアルタイムでの描画更新処理(投稿をトリガーとした動的な表示)
- パフォーマンス最適化(高負荷な3D描画を安定稼働させるための最適化)
バックエンド(データ処理・機能設計)
- ユーザー投稿データの受け取り・保存・配信の仕組み設計
- 大量投稿が集中するイベント環境を想定したAPIの設計
- セキュリティ対策(投稿コンテンツのバリデーション・不正投稿対策)
インフラ
- 万博のような大規模イベントに対応できるスケーラブルな構成
- 高トラフィック下でも安定稼働を担保するクラウド設計・監視体制
これら3つの領域を一社でまとめて対応できるかどうかが、プロジェクト品質に直結します。
複雑なシステムの開発をスムーズに進めるためには重要なことはなんですか?
複雑なシステム開発をスムーズに進める上で最も重要なのは、「開発全体をリードできる人材・体制を最初から確保すること」です。
開発プロジェクトが想定よりも遅延したり、品質にムラが出たりする背景には、多くの場合「誰が全体を見ているのか曖昧になっている」という構造的な問題があります。
フロントエンド・バックエンド・デザイン・インフラと関わるベンダーが増えるほど、各社の間に生まれる「すき間」が大きくなるためです。その「すき間」を埋めるのがPM(プロジェクトマネージャー)の役割です。
しかし、PMと開発を別々の会社・人材に分けてしまうと、今度は「伝言コスト」が発生します。PMが技術的な判断ができない、あるいは開発側がプロジェクト全体を把握していないという状態では、意思決定が遅くなり、手戻りも増えます。
弊社がPMも開発も一体で担うのはこの問題を解消するためです。プロジェクトの全体像を把握しながら技術的な判断もできる体制によって、クライアントが細かく動かなくても開発が前に進む状態を作り出せます。
今回のシステムはどのような体制で開発されましたか?

今回のプロジェクトでは、フロントエンド・バックエンド・インフラのすべての領域をまとめて弊社で担当しました。
Webシステムの開発においては「モーションや3D表現が得意な会社」と「バックエンド・インフラに強い会社」は、分かれていることが一般的です。見た目の表現力を高めようとすると、機能や安定性の担保が別会社になり、連携コストや品質のブレが生じやすくなります。
弊社はその両方に対応できる技術力を持つため、今回のような「表現力と機能性を同時に求められるシステム」の開発パートナーとして選ばれました。
PM機能も弊社が担い、要件整理から設計・開発・インフラまで一気通貫で推進しました。
クライアント側の窓口を一本化することで、複数ベンダーにまたがる調整コストを排除し、スピーディーな開発を実現しています。
システム開発をリードできるような人材が社内にいない場合、どのような対策が有効ですか?
「社内にシステム開発をリードできる人材がいない」という課題は、特にWeb制作会社やデザイン会社、あるいはデジタル施策に積極的に取り組み始めた事業会社においてよく見られます。この場合、有効な対策としてPM機能の外注があります。
開発そのものを外注することは多くの企業が行っていますが、PM機能まで外注できることを知らないケースは多いです。
弊社では、すでに付き合いのある開発会社があるが社内にPM人材がいないという場合に、PM機能のみを切り出して外注するスキームにも対応しています。
この体制のメリットは以下のとおりです。
- 既存の開発パートナーとの関係を維持しながら、プロジェクトのリード機能だけを補完できる
- 社内で採用・育成コストをかけずに即戦力のPM体制を整えられる
- 要件整理・スケジュール管理・ベンダーコントロールをまとめて任せられる
もちろん、ヒアリングから要件整理・設計・開発・インフラまで一気通貫で弊社に委ねる形であれば、クライアント側の負担はさらに軽減されます。システム開発の経験が浅い組織でも、要件が固まっていない段階からプロジェクトをスタートできるのはそのためです。
まとめ
今回の事例からわかるのは、大規模な参加型コンテンツを構築するには「体験の設計」「安定した稼働」「スムーズに開発できる制作体制」が求められるということです。
特に、3D表現のような演出要素と、投稿機能・インフラ設計のような機能要素を切り分けずに考えることが、イベント体験の質を左右します。
参加型の展示やプロモーション施策を検討している企業にとって、今回のケースは企画と開発体制を考える上で参考になる事例といえるでしょう。
